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月別アーカイブ: 2025年8月

MSBのよもやま話~バンニング術~

皆さんこんにちは!

MSB、更新担当の中西です!

 

~バンニング術~

混載は詰め切れば壊れる/守ればスカスカのジレンマとの戦いです。解決策は“勘”ではなく、ゾーニング(配置)×荷姿変換×固定×環境管理の4点を段取り化すること。本記事は、家具・家電・機械部材・食品・紙製品など異なる特性の混載を安全に詰め切るための、実務手順とテンプレを提供します。


1. 混載で起こる典型トラブルと背景

  • 点荷重・角当たり:硬いエッジが柔い箱に刺さる。

  • 滑り・横ズレ:低摩擦材の組合せで加速時に移動。

  • 振動共振:本体・パレット・床の固有振動数が一致して破壊が進む。

  • 結露・匂い移り:温湿差や揮発成分の吸着で品質劣化。

  • 強度不足の段積み:BCT/ECT相当の耐圧不足で潰れ。

対処は**“点を面に、隙を面圧に、負荷を分散”**が原則。


2. ゾーニング:レイアウトの勝ち筋

2-1. コア&外周モデル

  • 中央(コア):重い・硬い・低摩擦の貨物。

  • 外周:軽量箱で壁を形成し、全体の面圧を上げる。

  • 入口側崩れにくいブロックで閉じる(ドア開閉時の安全)。

2-2. スキ間管理

  • 長手方向の空隙は木材ダンネージで埋める。

  • 短手方向・局所空隙はエアバッグ+ハニカムで面圧化。

  • 空隙は一箇所集中を避けて分散する。


3. 荷姿変換と段積み設計

3-1. 荷姿変換

  • パレット化:不定形物や袋物に有効。

  • カバーリング:角当たり回避、面圧化。

  • 外装強化:コーナーパッド、バンド掛け、シュリンク。

3-2. 段積み

  • 段積み可否は**耐圧(箱/木枠/天板)**で決める。

  • 千鳥積みは荷重分散に有利、ブロック積みは段差が少なく固定しやすい。

  • 中間にスプレッダーボードを入れて面圧を均等化。


4. 固定資材の選定チャート(簡易)

  • 軽量・箱主体:ベルト十字掛け+エアバッグ+ハニカム

  • 重量混載:ベルト交差掛け+木材ストッパー(床固定)

  • 長尺物:側壁・床の複数点で拘束し“回転”を封じる

  • 不定形機械簡易治具を内製し、固定点を“人工的に作る”

仕上げは再テンション。固定後に貨物を揺すり、伸びを取ってから本締め。


5. 環境(温湿度・薬剤・匂い)マネジメント

  • 食品×金属の混載:匂い移り・防錆に配慮し分離ゾーンを設ける。

  • 紙×高湿航路:乾燥剤増量+ベーパーライナーで吸湿・膨れを防止。

  • 薬剤・溶剤系密封/吸着材で揮発対策、他貨物との距離を確保。


6. シナリオ別ミニケース

  • A:家具+金属部品+紙製品

    • 家具は外周で“壁”、金属は中央にまとめる。紙製品には防湿優先ゾーンを設定。角部にハニカム、金属側は防錆紙で養生。

  • B:大型家電+小箱多数

    • 家電を中央。周囲の小箱は千鳥積みで面圧を確保し、エアバッグで空隙を消す。入口側はブロック積みで“蓋”。

  • C:不定形機械

    • パレット上に簡易治具(2×4材+金具)で固定点を作成。ラチェットベルトを交差させて回転抑止。突出部はコーナーパッド+養生


7. 段取りテンプレ:混載設計の5ステップ

  1. データ採取:寸法・重量・外装強度(箱:段数想定、木枠:支柱情報)・表面特性(滑り/硬さ)

  2. ゾーニング:中央=重・硬・低摩擦、外周=軽・面圧用

  3. 荷姿変換案:パレット化・カバーリング・外装強化

  4. 固定計画:資材の種類・本数・角度・空隙の面圧化

  5. 検証:定点写真・揺すり→再テンション・チェックリスト記録


8. 現場で使う「混載バンニング20チェック」

  1. 積付け図は混載前に作成したか

  2. 重量物は中央に集約・高さも整えているか

  3. 軽量箱は外周で壁になっているか

  4. 入り口側は崩れにくいブロックで閉じているか

  5. 長尺物は回転を抑える固定ができているか

  6. 空隙は分散し、エアバッグ・ハニカムで面圧化したか

  7. 段積みは耐圧(箱/木枠)を満たす設計か

  8. 天板・中間板で荷重を面に広げたか

  9. 角当たりはコーナーパッドで保護したか

  10. ベルトやワイヤの交差掛けで横ズレを抑えたか

  11. 固定後に再テンションを実施したか

  12. 乾燥剤・ベーパーライナーは航路に対して十分か

  13. 匂い・薬剤の影響がある貨物を分離したか

  14. 金属部材は防錆紙・オイル紙で養生したか

  15. 温湿度・傾き・衝撃ロガーを設置したか

  16. 定点写真(6カット以上)を撮影したか

  17. コンテナ番号・封印番号・封印時刻を記録したか

  18. 書類(積付け図・チェックリスト)を添付したか

  19. ドアクローズ前に最終目視を行ったか

  20. 荷受地での開扉手順と撮影指示を共有したか


9. 成果を定着させる“仕組み化”

  • テンプレ化:積付け図、チェックシート、写真アングル見本を“型”に。

  • 資材標準:ベルト・エアバッグ・木材サイズの“標準表”。

  • 教育:新人はゾーニング模型で原理学習→実貨物でOJT。

  • フィードバック:荷受地の開梱写真を必ず回収し、原因→対策を更新。


混載の肝は、点を面に、隙を面圧に、負荷を分散
ゾーニング→荷姿変換→固定→環境管理を段取り化すれば、詰め切りと無損傷は両立します。

 

MSBのよもやま話~品質~

皆さんこんにちは!

MSB、更新担当の中西です!

 

~品質~

輸送トラブルの多くは、航路やトラック区間の“外で”起きているように見えて、原因はコンテナの中=バンニング品質に潜んでいます。詰め方・固定・防湿・記録の4点を設計できれば、損傷率を下げる/通関・配送の遅延を抑える/TEUあたりコストを圧縮するが同時に進みます。本記事は現場でそのまま使える手順とチェックリストをまとめた“実装ガイド”です。


1. KPIに効く「設計」の全体像

  • 充填率(容積効率)=実貨物容積÷コンテナ内法容積

  • 損傷率=損傷数量÷出荷数量

  • TEUあたり原価=(運賃+資材+工数+クレーム費)÷TEU

  • リードタイム=出荷~引渡しの総時間

ポイント:充填率だけを追うと損傷率が上がりやすい
充填率70~85%を目安に、固定力・荷姿保護・防湿を同時に最適化するのが現実解。


2. 積み付け(ローディング)設計の基本

2-1. 重量と重心のルール

  • 重い・硬い・低摩擦の貨物は中央(コア)に、軽量物は外周で“壁”を作る。

  • 前後・左右の重量偏りを最小化。パレットの向きは長手を走行方向へ合わせると荷崩れに強い。

2-2. 空隙(スキ間)の扱い

  • 空隙は局所的に集中させない。分散配置+エアバッグで面圧を作る。

  • 長手方向の空隙は木材ダンネージスプレッダーボードでブレーキ。

2-3. 段積みと面圧

  • 段積み可否は荷姿の耐圧指標(段ボールならBCT/ECT相当、木枠なら支柱設計)で判断。

  • 角当たりを避けるコーナーパッド/ハニカムボードで面圧に変換。


3. 固定(ラッシング)最適化の考え方

3-1. 資材の使い分け

  • ベルト&ラチェット:再現性が高く時短。

  • ワイヤ/チェーン:重量物や局所固定点に。

  • エアバッグ:空隙充填と面圧付与。

  • 木材ダンネージ:長手方向のストッパー、床・壁への吸収材。

3-2. 設計の順序

  1. 想定加荷方向(前後・左右・上下)を洗い出す

  2. 固定点(ラッシングリング、フロア、壁)を選定

  3. 固定本数・角度・ルートを決める(交差掛けで横ズレ抑制)

  4. 締付け管理(ベルトはラチェット段数/ワイヤはターンバックル位置で見える化)

コツ:固定後は体当たり・揺すりで初期伸び分を吸収→再テンション


4. 防湿・結露対策(コンテナレインを防ぐ)

  • 乾燥剤:吸湿量の目安を航路・積載水分で見積もる。台紙貼りで回収漏れを防止。

  • ベーパーライナー:長距離・高湿航路向け。内張りで結露滴下を遮断。

  • 敷板・スリップシート:床面の残留水分や汚れを隔離。


5. 目に見える品質:写真・計測ログ

  • 定点写真:①空荷全景 ②1/3積み ③2/3積み ④満載 ⑤固定・防湿材 ⑥ドア閉直前

  • データロガー:温湿度・傾き・衝撃の最小セット。異常時は時間軸で原因区間を特定。

  • ラベル:コンテナ番号/シール番号/封印時刻を写真に写し込む。


6. ミニケース:破損率2.1% → 0.4%へ

  • 課題:重量物パレットと軽量箱の混載で横ズレ・角潰れ発生。

  • 施策
    ①中央へ重量物を再配置(外周は軽量箱で“壁”)
    ②長手空隙にダンネージ追加+ベルト交差掛け
    ③エアバッグで面圧を作り、角部はコーナーパッド
    ④乾燥剤増量+定点写真の徹底

  • 結果:3出荷サイクルでクレーム費▲80%平均LT▲1.2日(再出荷・再手配が減少)


7. 今日から使える:バンニング10項目チェック

  1. 積付け図(レイアウト)はあるか

  2. 重量物は中央、軽量物は外周で“壁”になっているか

  3. 前後・左右の重量バランスに偏りはないか

  4. 長手・短手の空隙は許容範囲か(集中していないか)

  5. 固定資材の種類・本数・角度は妥当か

  6. コーナー保護・面圧化はできているか

  7. 乾燥剤・ベーパーライナー等、防湿は十分か

  8. 写真ログは6カット以上撮ったか

  9. ラベル(コンテナ番号・封印番号・時刻)は写真に写っているか

  10. ドアクローズ後、外観と封印を再確認したか


8. 標準作業(SOP)テンプレ(抜粋)

  1. 積付け図確認資材準備(ベルト・木材・エアバッグ・乾燥剤)

  2. 床面清掃ライナー・敷板

  3. 重量物から積付け外周に軽量物

  4. 固定&再テンション角部保護

  5. 乾燥剤設置定点写真6カット

  6. 封印・記録出荷書類添付


バンニングは“現場の勘”でなく設計と再現性で勝てます。

  • 充填率は**70~85%**を狙い、固定・面圧・防湿をセットで設計。

  • 写真とログで原因を追える化すれば、クレームコストもLTも下がります。

 

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